グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



ホーム > 高次脳機能障害支援 > よくあるご質問(成人編)

よくあるご質問(成人編)



Q1. 認知症とはどう違うの?

A. 認知症でいうと、アルツハイマー病に代表されるような現在の医学では治すことのできない、少しずつ症状が進行していくイメージが強いのではないでしょうか。
認知症とは、アルツハイマー病や脳血管障害、ピック病など、さまざまな疾患が原因で記憶力や判断力が低下し、日常生活に支障が生じてしまったことで、症状や治療方法も多様です。そのため、認知症の人も高次脳機能障害があるといってもまちがいではありません。
一方、高次脳機能障害は、厚生労働省の定義によると「事故や病気によって脳が損傷し、病気は治癒固定したものの社会に適応できない記憶や注意、遂行機能などの障害があること」です。原因疾患は、脳血管障害、脳外傷などがありますが、アルツハイマー病などの進行性疾患は含まれていません。つまり、脳卒中や脳外傷などが原因の認知症は高次脳機能障害ですが、アルツハイマー病などの進行性疾患が原因の認知症は、高次脳機能障害ではないと考えていただければよいでしょう。

Q2. 発達障害とはどう違うの?

A. 発達障害者支援法での発達障害の定義は「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害、その他これに類する脳機能の障害であって、その症状が通常低年齢において発現するもの」となっています。
一方、厚生労働省の定義による高次脳機能障害は、脳が損傷した原因となる事故や病気の事実と、脳の損傷が確認されなくてはなりません。そして、脳の損傷により、日常生活や社会生活への適応に問題が生じることです。
両障害の違いは、発達障害は原因を規定せず、幼少期に発症するという症状重視であるのに対し、高次脳機能障害は発症原因を明確に規定していることです。
両障害の共通する症状や違いに関しては、今後の研究に待たれる部分が多いと思われます。

Q3. 高次脳機能障害はよくなるの?

A. 純粋な医学的見地からは、個人差はあるもののある程度まで回復するが、100%の回復は無理だとお答えします。ただし、ここでいう「回復」とは、「知能検査や記憶テストなどによる点数での評価」のことです。高次脳機能障害は、日常生活または社会生活を送るうえで困難が生じている状態です。だとしたら、点数では100%回復しなくても、「日常生活に困らないレベルに達した」、あるいは「困らないように周囲の人の配慮や環境が整えられるようになった」のならば、「高次脳機能障害はなくなった(=よくなった)」ということになります。
人は成熟後、1日10万~20万個の脳細胞が減少しているといわれています。脳細胞数を基準とすれば、成人の能力は毎日劣化しているのですが、だれもそのことを取り上げて高次脳機能が日々低下しているとは考えないでしょう。知能検査や記憶テストの点数も、それに似たようなもので、実生活のうえでは参考程度にしかならないので、点数に一喜一憂する必要はありません。


こんなとき、どうしたらいい?

そわそわして集中しない

家族・周囲の人

いつもそわそわして、集中していないのよねぇ。落ち着きがないから、作業スピードがどうしても遅くなるし…。どうにかならないかな!

本人

仕事中にほかの人が話していると、イライラしちゃうんだ。だって、人の話し声がすると、気にしないようにと思っても、気になっちゃうから集中できないんだよ。

スタッフからのアドバイス

聴覚が過敏になっています。しかも、注意障害のために話を小耳にはさみながら作業を進められません。気になることがあると、それにとらわれて、集中すべきことに気持ちが向けられないのです。また、感情のコントロールの難しさから、イラ立ちを紛らわすことができなくて困っているのです。

【そんなときは】
注意がそれやすいものを本人の周りからなくしましょう。
たとえば、静かな部屋で仕事をさせるのも一つの手です。


普通の会話をしていたら怒り出した

家族・周囲の人

「あのドラマ、おもしろいね」って話していたら、急に怒り出してびっくりした。でも、翌日になると何もなかったかのようにしているから不思議だよね。

本人

自分が思っていたことと違うことを言われたから、なんだかすごく腹が立っちゃったんだよ。でも、そのときのことは、よく覚えていないから、いまさら言われても困るよなぁ。

スタッフからのアドバイス

注意障害のために、自分の考えていたことから大きく外れた話にはついていけなくなり、腹を立て、行動と感情の障害のために、抑制ができなくなったのです。記憶障害もあるので、自分の言動を覚えておらず、周りの人との感情的ギャップが大きくなるのです。

【そんなときは】
唐突に話し始めるのではなく、「話していい?」と声をかけてから話かけるようにしましょう。
また、本人の言い分を、まず聞いてくれる人が必要です。


「いつ帰るの?」と何度も聞いてくる

家族・周囲の人

しょっちゅう家族の予定を聞いてくるんです。会社で仕事をしているときも、1時間おきに「何時に帰る? 」と携帯電話に連絡してくるのでうんざりします。

本人

1人でいると、何をしていいのかわからなくて不安になる。とにかく、家族の予定を確認したくなるの。電話しちゃいけないの?

スタッフからのアドバイス

遂行機能障害のため、今日は何をしたらよいのかといった行動の基準や枠組みがないと不安になってしまうのです。また、相手の立場に立って考えることが難しいので、自分が不安になったら、相手のことも考えずに電話をしてしまうのでしょう。

【そんなときは】
本人の予定とやるべきことをわかりやすく書き込んだスケジュール表をつくってみましょう。
家族の予定を簡単に書き込んだものも並べて貼っておくとよいでしょう。


なんですぐに怒り出すの?

家族・周囲の人

ちょっとした言葉じりをとらえて、「言い方が気にくわない」って、すぐに怒っていたんです。ある日、福祉作業所の人が自宅訪問したとき、息子がなくしたものを探すため、部屋の片付けを手伝ったら、怒らなくなったんです。部屋がきれいになったことと関係があるのかしら?でも、家族が部屋を片付けると怒り出すのよね…。

本人

家族は勝手に部屋を片付けるし、うるさいから部屋に入れない。職員の人は何も言わず手伝ってくれたので助かった。スッキリしたよ。また手伝ってくれるとありがたい。頼むよ!

スタッフからのアドバイス

遂行機能障害のため、どう片付けたらよいのかわからないのです。また、行動と感情の障害のために、部屋が汚いというストレスから、ちょっとしたことでカッとなっていたのです。しかし、本人はストレスの原因に気づいていません。探し物をするという自然な形で片付けを手伝ってもらえたのは、ラッキーでした。

【そんなときは】
ストレスの原因を探り解決できる方法を一緒に考えましょう。


わかってないのに、どうして「はい」って返事するの?

家族・周囲の人

仕事の説明をすると「はい、はい」って返事をするから、てっきりわかっているのかと思っていたら、全然わかっていないんだよね…。

本人

説明を聞いているときに返事をしないと、「わかった?」と何度も聞かれるから、話を聞くときは「はい」って返事をするようにしているんだけどなぁ。それっていけないことだったの?

スタッフからのアドバイス

言語理解力が低下してしまったために、説明に本人の理解がついていけない状態です。説明を受けているときには「わかった」と答えたほうがよいという、まちがった学習をしてしまったためでしょう。

【そんなときは】
言葉だけで説明するのではなく、文字や図も使って、目でも確認できる方法を取りながら、ゆっくりと説明しましょう。


覚えられないのに、メモを取らない

家族・周囲の人

しょっちゅう忘れるのに、メモを取ろうとしないんだよね…。「メモを取るように!」と何度注意してもきかないんだ。

本人

「メモを取れ」と言われるけれど、何を書けばいいのかわからない。それに、どこに書いたのか忘れちゃうから役に立たないよ。全部を忘れるわけじゃない。覚えていることもある。もう、うるさい!

スタッフからのアドバイス

遂行機能障害のために、「いつ、何を、どこに、どのように」書けば役に立つのか、自分では考えられないのです。また、注意障害があるため、人の話を聞きながら書くことが難しいのです。メモを取ることを身につけるには、長い練習期間が必要です


マナー違反は許せないんだ!

家族・周囲の人

普段は温厚な人なのに、路上駐車を見かけると車に向かって怒鳴り散らすんです。その起こり方がすごいから、トラブルになるんじゃないかって怖い…。「そんなに怒らなくても…」と声をかけると、もっと怒り出すから、どうしたらいいのかわからない…。

本人

マナー違反は許せないんだ。悪いのは相手だろ!悪いことを注意したらいけないの?それと、カーッとなると、頭の中が真っ白になって抑えられなくなるんだよ。あとで嫌な気分になる。

スタッフからのアドバイス

行動と感情の障害のため、自分の正義感だけで動き、相手の事情を推測することができないのです。また、自分の基準にこだわってしまい、気持ちの切り替えがうまくできないうえ、一度怒りが爆発すると、抑制が効かなくなってしまうのでしょう。

【そんなときは】
まずは、本人がこだわる環境から離れるようにしましょう。家族や周囲の人達は、「これは障害だから」と思って、割り切ることで気持ちを軽くしましょう。


簡単な仕事なのに、できないときがあるのは?

家族・周囲の人

急ぎの仕事が入ったので頼んだら、「わかりました」と返事をするのに、手をつけていない。普段、もっと難しい作業をしているのだから、指示の内容はわかるはず。

本人

指示されたことは、ちゃんとやっている。できなかったのは、仕事を急に変更したり、自分にわかるような説明をしないからだ。指示する側が悪い。ちゃんと指示してくれれば、自分はできる!

スタッフからのアドバイス

相手の事情を察知できなかったり、予定の変更についていけないのは、遂行機能障害のために臨機応変な対応ができないからです。病識欠落のため、相手の指示の仕方の悪さだけを取り上げたり、「自分はできる」と言い張るのです。

【そんなときは】
疲れがたまるとこうしたことが起きやすいので、適度に休憩をとるように促し、急な予定変更は避けましょう。